平成8年度、平成9年度に引き続き平成10年度融合化開発促進事業として国及び沖縄県の補助を受けた、当組合の融合化開発促進事業3ヶ年を振り返ってみました。
 国内に置いても海洋深層水の取水条件に恵まれた沖縄県でありますが、本格的な取り組みは高知県、富山県と異なり民間主導により興されたと言う特記すべき事情があります。
 組合が開発に取り組んできました洋上設置型海洋深層水取水システムは、概念的には各方面で色々なアイディアが出され、データ的にもある程度練られた装置として図面にも描かれておりますが、具体的に設計、製作そして海域に設置して数トンレベルながら深層水を取水し、医療や食品等の分野で試験的な活用を行った実績は最初であり貴重であります。
 振り返りますに、本組合の設立は次の様な経緯をたどってきました。平成4年に有志によります海洋深層水の勉強会が発生しました。この勉強会は産・官のメンバーよりなる任意の集まりでバクテリアのごとく規模が小さいものでしたが、生命エネルギーが旺盛で多方面に影響を及ぼし、平成5年には財団法人沖縄農林漁業技術開発協会と株式会社トロピカルテクノセンターによる「海洋深層水共同プロジェクト」の発足に至りました。この共同プロジェクトは、講演会の開催を行って県民の海洋深層水に対する理解を促すとともに、県内における最初の海洋深層水事業の可能性調査を行いました。
 海洋深層水共同プロジェクトの進行に伴い、より組織的に広範囲の啓蒙、調査研究を行う必要性より「沖縄県海洋深層水利用推進協議会:会長 オリオンビール株式会社代表取締役 金城名輝氏」が平成6年12月に発足し、当時の大田昌秀沖縄県知事に海洋深層水研究施設の早期建設を要請しました。
 沖縄県海洋深層水利用推進協議会では、具体的な事業化に向けた実証レベルの海洋深層水の試験研究を進める上から数トン規模の深層水を取水できる簡易型装置の開発を進め、船に市販のソフトチューブを利用した取水管を搭載し、任意の海域で深層水の取水を可能にする移動式取水システムを具体化させ、県の水産試験場(当時:奥間徳五郎場長)のご協力を得て深度450〜600mより合計で15トン余の深層水の取水に成功しました。
 県では平成6年度から海洋深層水の可能性調査を予算化し、本格的な事業に向けた取り組みが開始されました。沖縄県海洋深層水利用推進協議会も調査研究及び深層水取水の協力を行いました。現在、久米島北部海域に日量取水能力13,000トンを誇る我が国最大の陸上設置型海洋深層水研究施設の建設が始まっております。
 沖縄県海洋深層水利用推進協議会による移動式の深層水取水システムは一応の成功を得ることができたのですが、さらに継続的な研究開発の必要性が検討され、平成7年12月に沖縄県中小企業団体中央会の指導を仰ぎながら沖縄県知事より組合設立の認可をいただくことができました。
 平成8年度より当組合が開発に取り組んでおります洋上設置型海洋深層水試験取水装置は、上記の船による移動式取水技術の延長線上に位置するものであり、本県の島しょ圏での利活用を考慮した自立分散型少量取水の形態を有し、深層水の取水駆動動力源として波力等の自然エネルギー利用の特徴を兼ね備えています。また、本装置が浮漁礁としての集魚を増す「パヤオ効果」も備えており、海洋深層水とパヤオと言う新しい組み合わせによる相乗効果はまだ定量的に測定されたものではありませんが洋上設置型システムの大きな特徴であります。同試験取水装置が台風常襲海域である熱帯の外洋に正味2ヶ年以上に渡り安定的に係留されたことは係留技術に1つの評価を得るものであると確信します。
また、市販のソフトチューブの利用、異なる2つの深度からの複層取水、深度1,000m以深からの取水、弁無しポンプによる深層水の湧昇等、そのチャレンジ精神、成果は「創造」、「研究」に少なからずとも値するものであると考えています。
 一方、深層水の利活用における研究開発分野では、アトピー性皮膚炎等への医療試験、魚介類への鮮度保持に関する予備試験等、異業種の組合員組織構成を越えた拡がりの中で進められたことが特記されます。その中でも特に医療法人仁愛会:浦添総合病院様、株式会社ホクガン様、第二稲荷丸様(船長:浅沼信宏氏)のご協力を戴けたことは幸いでありました。
私共は、取水できる少ない深層水をより効果的に活用するための利用方法を模索して参りました。先進県の高知、富山両県及び他の道県の公表されている諸利用計画とはだいぶおもむきを異にするものであると考えています。
 本組合が3年間に渡って携わってきました洋上設置型という取水技術、及び深層水の活用方法等は、まだそれぞれに確立に至っていない技術群、作用メカニズムの解明が待たれる分野など多岐多様に及ぶものであります。日々の技術の開発段階では、新たな疑問や研究開発の芽を掘り起こせたことは、深層水を含む海水の不思議、冥利さえも感じました。
 組合の研究開発事業の成果は、随時、新たな事業展開へと移行して社会へ還元されるべきもので有ります。
 こうした深層水研究開発事業の誕生に当たりその火種を絶やすことがないように、新たな触発と常にあたたかい励ましとエネルギーを注いでいただいた財団法人亜熱帯総合研究所、財団法人若狭湾エネルギー研究センター垣花秀武理事長、東京大学大学院総合文化研究科高橋正征教授、厚生省国立医薬品食品衛生研究所化学物質情報部神沼二眞部長の方々に感謝を申し上げます。
 今年2月26日朗報が入りました。本開発協同組合の研究開発内容をベースにした研究プロポーザルが、前述の財団法人亜熱帯総合研究所を管理法人とするNEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構の平成10年度即効型地域コンソーシアム事業に採用されました。(研究課題名:洋上型海洋深層水取水システムの開発と海域肥沃化、二酸化炭素吸収及び生物効果の研究開発/Development of a floating pumpimg system of deep ocean water for ocean fertilization, Co2 sequestration and various biological uses.)
 最後に、この事業は、国、県及び沖縄県中小企業団体中央会のご指導、ご支援のもとに実施されたものであり、「海ヤカラ1号」の取水ラインの技術構築に当たりましては組合員の新糸満造船株式会社と藤井宏一郎氏のご尽力により進めることができました。また、研究開発にあたりましては県内外の研究機関の指導・助言によりまして達成できたものであります。ここに関係諸機関、並びに関係各位に対し厚くお礼申し上げます。